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歴史から読みとく人間心理~太田道灌から学ぶ~

2023年06月04日

仕事を進める上で、人との関わりは避けては通れません。経営者や責任ある立場の方であればなおのことですね。単純に仲良く、スムーズにといった関係だけでは済まされないでしょう。また、それを受け止める自分自身の心の持ちようも注意しておきたいものです。

今回は、人間関係を考える上で重要な人間の心理について歴史から考えていきましょう。

どんな時代にも通じる人間心理

技術革新が進み、ChatGPTなどのAIが急速に台頭する昨今、ビジネスで利用するにあたり重要なことがあります。それらを使う人間の心構えや人と人との関係性です。

経営者の皆さんは会社を維持するため、常に自分を奮い立たせていることでしょう。「強くてできる自分」を意識して行動することは大事なことです。一方で、同じ自分の中に、弱い自分も存在するはず。「できる自分」の裏に内向的であったり、些細なことを気にしたりする弱い部分。そこに目をつぶらず、自覚しておくのが、実は大切なのです。「人間は完璧じゃない、大したことはない」というくらいの心構えでいてみましょう。自分を過信して危険な方向に進むのを避けられるのではないでしょうか。

というのも、歴史に目を向けてみると、起こらずともよかったはずの戦、諍い、近年でいえば公害問題などが何度も発生しているのが見て取れます。わかっているはずなのに、なぜそういった出来事が繰り返されるのか。それぞれ時代や文化の違いがあるとはいえ、人間が考え行うことに大差がないからです。歴史上の事象を丁寧にひもとくと、そこに至るまでの人間心理が浮かび上がってきます。

それらを事例として参考にしてみましょう。現在の人間関係や最先端技術を利用する際のヒントとなるはずです。

歴史が教えてくれる人との関わり方

歴史をひもといていくと見えてくるものがあります。それは、ビジネスにおける人との関わりに大事な感性と理性のバランスです。

感性ばかりが鋭いと、実行能力・実現力に欠けてしまいます。あるいは、つい感情的になり一喜一憂しやすかったり、気分に振り回されたりしかねません。 しかし、理性的であり過ぎてもいけません。自分の心を押し殺しすぎれば、想いが相手に伝わりにくくなってしまいます。それにより、部下が思うようについてきてくれない。顧客の心を動かせないといったことが起こるでしょう。

こういったことは、古代を見ても戦国時代を見てもあるもの。さらに、争いの決着がつくのは、いずれの時代でも、心理合戦によることが多いのです。力が強いから勝てるというのは、戦の状態になってからの話です。そこに至るまでの根回しや内部分裂、時にはスパイ活動などから最終的な勝敗が決まっているのです。

こう考えると、人の生き死にはないにしても、現在のビジネスの世界にも通じるものがありますね。

ただ、こういったことを「自分はわかっている。理解した上で行動している」と、優秀な人ほど思ってしまいがちです。しかし、そこに落とし穴が潜んでいることにも気づいていただきたいのです。

忠実に仕えた主君に謀殺された太田道灌

室町時代後期に活躍した武将、太田道灌。三十数度にも及ぶ戦で一度も負けたことがなかったといいます。と、同時に歌を詠む才能の素晴らしさも持ち合わせ、まさに文武両道の名将でした。さらには、徳川家康が江戸に入るはるか前に、江戸城の基盤を作った人でもあります。土地の状況を見極める目があり、戦略的に構築をしていく築城の天才ともいうべき人物でした。もちろん、戦にしても築城にしてもすべては主君のため。扇谷上杉家の家宰(筆頭家老)として精力的に働いていたわけです。

日暮里駅前に立つ太田道灌像

ところが、風呂に入っているところを襲われ殺されてしまうのです。それも扇谷上杉家の当主上杉定正の命によってです。さすがの百戦錬磨の強者も、無防備なところを襲われてはひとたまりもありません。道潅は「当方滅亡」と言ってこと切れたといわれています。

上杉定正は、なぜ優秀な忠臣である道潅を謀殺したのか。

道灌が名を上げ、力を持つようになると、扇谷上杉家の本家にあたる山内上杉家の当主である上杉顕定としては、おもしろくありません。道灌は、曲がったことを見過ごせず、遠慮なく本家の家臣の批判を行ったとも伝わっています。そのようなことがたまりにたまっていったのでしょう。とうとう、本家の顕定は、定正に「道灌はお前の首も狙っているぞ」とそそのかすのです。

その翌年、顕定は、道灌を軽はずみに失った定正を攻め込みます。両家は長きに渡る争いを繰り広げ、結果的に「当方滅亡」という道灌の言葉通り衰退していったといいます。

歴史をひもとくことで自分を適切な位置に戻す

ところで、非常に優秀な武将であった太田道灌ですが、驕る心がまったくなかったかといえば、ゼロではないと思うのです。

自分にはこれだけの価値があるから、主君の信頼は絶対だろう。自分がいなければ主君の一族は立ち行かないだろうから、絶対に自分を手離すはずはないだろう……という気持ちもあったのではないでしょうか。

このような心理的な駆け引きは時代を越えて通じるものがあるはずです。歴史から学べることは、教養的な知識だけではありません。どの時代でも変わらない人間の心の機微を知ることにより、自分にとっての適切な場所にいつでも立ち戻ることができるのです。

人間は新しい技術や可能性を目の前にした際、自分が調子の良い時には何でもできると思ってしまうもの。でも、何でもできると思った瞬間から衰退が始まるのです。その歯止めとしても歴史を活用していきたいものですね。

【関連記事】必要なのは能力だけではない? 相乗効果を生むためのチームビルディング

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