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話上手な人は“例え上手”でもある
プレゼンや商談などで、「伝えたいことがあるのに、うまく伝わらない……」といった悩みを持つビジネスパーソンは少なくありません。
伝わらないということは、何かしらの原因があるのであり、そのためのハウツー本なども人気でさまざまな手法を紹介したものが売れているようです。
反対に、プライベートや仕事などのジャンルに関わらず、いわゆる「話し上手」な人も少なくなく、なかでも、例え話がうまい人は相手にわかりやすく伝えることに長けています。
考えてみれば、例え話というのは「視点の切り替え」であり、話の内容を別のジャンルのものに「横展開」している行為になります。
つまり、構造だけを抽出して、話を相手のわかりやすいものへ置き換えているというわけです。
ただし、話を簡略化して、まったく関係のない別のジャンルの話に置き換えているだけ、というわけではありません。
一旦、AとBの共通項を一つ上の抽象度から見つける必要があり、それが見つかったら、Aの骨組みをBに移し替えて相手に伝えているのです。
こうして説明すると、とても難しいことのようですが、ほとんどの人が例え話をしたことがあるはずです。
わたしたちは、自然とこの“例える”という作業を日常的に行なっているのです。
抽象度を変えれば物事の見え方も変わる
何かに例えるという技法は、何も会話だけではありません。
物語などの比喩表現にも活用されています。
特に隠喩のような、直接的にAという話をせずに、Bという話のなかに“わかる人にはわかる”話を共通項として書く、といった手法は広く使われています。
その代表的なものが、古事記などの日本神話なのです。
一見、話の内容はAという神話であり、昔話としてもおもしろく、ストーリーもきちんと成立しています。
ですが、わかる人が読めば、実はAのように見せかけてBの話をしている部分や、Cの話をしている箇所もあり、またDの話を示唆しているなど、たくさんの隠喩で成り立っている物語でもあるのです。
つまり、読み手自身が抽象度を変えることによって話の見え方が大きく変わり、この切り替えができる人にしか理解できないストーリーが隠されているというわけです。
相手の話を自分の得意分野で例えてみる
実は、この視点の切り替えや横展開は、ビジネスの分野では非常に重要なスキルであり、欠かせない技術でもあります。
例えば、アイデアを出すときや、ターゲットの分析などでも、抽象度を上げたり下げたりして、視点を変えていくことがポイントになるからです。
では、このスキルを身につけるにはどうすればいいのでしょうか。
最適なトレーニングが「ジャグリングトーク」です。
例えば、あなたがビジネスにしか興味がなく、特に趣味もない人だとします。
そんなあなたがアニメ好きの同僚と会話をするシーンを想像してください。
あなたはビジネスでいま注目していることや、悩みなどを同僚にひとしきり話したとしましょう。
すると、続いて同僚は自分の好きなアニメの話を始めました。
二人の会話はまったく噛み合わず、それぞれが自分の好きな話をしているという状態です。
そのときに、相手のアニメの話をただ聞き流すのではなく、自分の今のビジネスにおいて活用できる部分はないか、という視点を持って聞いてみてください。
そして、少しでも引っかかる話があれば、「それって、ビジネスだったらこういうことだよね」と、自分の得意分野に置き換えてみるのです。
また、ビジネスだけに限定しなくてもかまいません。例えば、社内の人間関係を、「その〇〇っていうキャラが置かれている状況に似ているよね」など、二人が共通してわかるものに置き換えてもいいでしょう。
すると、何が起きるのか。
これまでなかった視点が生まれ、一気に視野が広がり、すべてがビジネスチャンスだということに気づくようになるのです。
チャンスを手にする「視点」を養う
ビジネスチャンスを多く手にする人と、そうでない人の違いはなんでしょうか。
それは、視点です。
チャンスに恵まれる人というのは、極端に言えば、日常のすべてがビジネスチャンスだという視点を持って生活をしています。
一から十までを「これはビジネスに展開したらこうだな」「ビジネスに例えたらこうだろう」「ビジネスにしたらこうなるかも」という目線で見る習慣がついているともいえるでしょう。
つまり、ジャグリングトークは「何かに置き換える」=「横展開」する視点を養うトレーニングになるのです。
これを繰り返していくと、仕事以外でも、夫婦の会話のなかで出た晩ご飯のおかずの話や子どもが学校で先生にこんなことをいわれたなどの話も、すべてがビジネスの種に見えるようになります。
また、コミュニケーションを深めるためにただ傾聴するのではなく、「この話、ビジネスに置き換えたら……」と興味津々で聞くようになるので、会話上手にもなれるはずです。
構造がわかれば“成功の理由”もわかる
世界には人が作った神話がたくさんあって、まったく地域が違い、文化的交流がなかったであろう国々にも、まるで真似たかのような同型の神話があります。
そうしたいろいろな神話のなかからストーリーの構造だけを抜き出したものを「ヒーローズジャーニー」と呼びます。
有名な話の一つとして、スティーブン・スピルバーグ監督の作品「スターウォーズ」は、このヒーローズジャーニーを踏襲して作ったともいわれています。
つまり、人類共通の無意識の奥底に、同じストーリーがあり、多くの人がそのストーリーに共感したからこそ、世界的大ヒットにつながったというわけです。
このヒーローズジャーニーは、神話学の学者たちが型を見つけ出し、抽出したものであり、ビジネスの分野でも会社のプロフィールづくりなどに活用されてもいます。
型はジャンルを超えて活用できるものであり、一度構造さえ掴めば、誰にでも使うことが可能です。
ジャグリングトークを練習していくと、そうした“型=物事の構造”をあらたに自分で抽出できるようになるのです。
この構造が見えるようになれば、普段の会話はもちろん、世の中にあるヒット商品やサービスの“当たった理由”までも理解できるようになります。
それはつまり、自分でも真似ることができるということであり、ビジネスにおいて大きな武器を手にした、ということにもなるのです。
ジャグリングトークはゲーム感覚で気軽に取り組めるものなので、これまでになかった視点を手に入れるためにも、ぜひ日々のなかで実践していただければと思います。
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