永い時間を捉える経営のために
編集の仕事を続けてきた自分にとって、中でも書籍編集業務というのは必ず、著者の人生の物語を垣間見ることに繋がっていきます。
いま目に見えているその人の背景に、もう目にすることのできない幼い頃の記憶、青春時代の出来事、やりきれない夜や歓喜の春など、著者をかたどるさまざまな年月が感じられるのです。
ですから、一冊の本というのはそこに書かれているものだけが綴じられているわけではなく、著者のそれまでの時間がそのまま行間となって、「読めない文字」がたくさん記されています。
そんな一編集者であった自分が起業することになり経営者になってからは、企業を継続するには社会にどう貢献できるのかを意識するようになりました。
すると目の前のことだけでなく、現在の事象を生んだ過去、そして過去から繋がる未来に対して理解を深めようと考えるのは他の経営者と同じく、ごく自然なことでした。
そうした自分にとってアテアの「神旅®」というサービスは、史実における名高い人物のみにクローズアップすることなく市井にあった人々の生きた歴史を土地土地において伝えてもらえたため、過去の時間の物語をあたかも自身に重ね合わせるように触れることができました。
編集も、経営も目に見えることはもちろんのこと、目に見えないながらも今の現象に繋がっている背景をいかに感じられるのかが肝心。
近視眼的にものごとを捉える視点と同じように俯瞰したものの見方も持ち合わせて初めて、読者に著者の物語を立体的に伝えることができる。経営もまた、その両方の視点があって短期と長期の取り組みのバランスが見えてくるように思います。
その意味で、「神旅®」に触れるより以前に比べて目の前のことに固執しすぎることなく物事をより永い時間の流れの中で捉えるバランスが取れるようになり、肩の力が入りすぎることなくスムーズな経営に繋がるようになりました。
現代ではもう目にすることができなくなってしまったその土地に眠る歴史を知ることで、編集者としても経営者としても必要な視点を持たせていただけたこと、本当に感謝しています。